
つい先日、10年前に他界した叔父が大切にしていた、CASIOのワープロを譲り受けました。
重厚なボディ、カタカタと心地よい音の鳴るキーボード、そして底にボールのあるマウス。フロッピーディスクに書かれた、当時作成していたであろう書類のデータを確認すると、当時いかに叔父がワープロを愛用し、そして相棒として使っていたのかがよく分かります。
私がこのワープロに初めて出会ったのは、実に20年前のこと。当時はタイピング練習モードをひたすらに遊んだものです。
そんな思い出とともに手にしたワープロ。目の前にすると、やはり職業柄か、自然と現在のパソコン、そしてWordを使う日々と重なる部分を、探したくなりました。


ワープロが教えてくれた"集中力"
ワープロが家庭に広く使われていたのは、1980年代から1990年代。先駆けとなる専用機は1978年に登場したとされています。
今のパソコンに近い形となったのは、1980年代。現在の様にパソコンが一般家庭に普及する前までは、文章を作る機械と言えば、ワードプロセッサ、通称ワープロでした。
ワープロの最大の魅力は「文章を書くことだけに集中できる」というシンプルさです。
インターネットが手軽に利用できる環境でもないため、余計な通知に邪魔されることもありません。目の前には文章を打つための画面とキーボード、そして用紙。一文字一文字を大切にしながら原稿を仕上げていく時間は、今振り返るととても贅沢に思えます。
印刷機能も搭載しているのが嬉しいものでした。別途プリンターを準備する必要もなく、直ぐに印刷することができます。インクを紙に写している時の、あの何ともいえないカチカチ音。1行1行が紙に写っていく臨場感も感じられました。
そんなワープロですが、今だから思う不便さもあります。印刷後に誤字を見つけた時の、あのガッカリ感。修正テープで消しても完全には隠れず、清書の美しさを損ねてしまうこともありました。
さらに保存といえば、フロッピーディスク。今と比べると容量も小さく、クラウドで好きなだけ保存できる環境とはまるで別世界です。
不便だけれど、その不便さが文章に重みを与えていたのも事実でした。打ち直しの大変さを思えばこそ、一行一行を真剣に書き進めたのです。叔父の残したワープロを見ると、そんな時代の空気まで伝わってくる気がします。


パソコンとWordの登場が変えたもの
時代は大きく移り変わり、今や文章作成の相棒は、パソコン、そしてWordですね。Officeソフトは年齢を問わず幅広く活用できる必須ツール。ワープロに慣れていた世代から見ると、その便利さはまさに革命です。
Wordでは、文章の修正はワンクリック。間違えたら削除キーで消すのは共通ですが、コピーや貼り付けはずっと操作が楽ですね。さらにフォントや文字サイズも自由に変えることができ、表現の幅が格段に広がりました。
例えば、見出しを大きく太字にし、本文を読みやすい大きさに整える。あるいは重要な言葉に色を付けて目立たせる。こうした書式設定をワープロで再現するとなると、なかなかに苦労しますね。
また保存の仕方も大きく変わりました。USBメモリや外付けHDDに加え、クラウドサービスを利用すれば、家でも職場でも、さらにはスマートフォンからでも同じ文章にアクセスできます。データがなくなる不安は格段に減り、安心して書き進められる環境が整いました。


ワープロとパソコンの違いをどう受け取めるか
ワープロとパソコン。それぞれが私たちに与えてくれたのは、いったい何なのでしょうか。
ワープロは、ひとつの文章を作り上げる際に必要は「集中力」を育んでくれました。紙に印字される文字は消えにくく、だからこそ真剣に向き合う時間を持てたのです。
一方でパソコンは、「効率」と「自由」を与えてくれました。修正も保存も簡単で、レイアウトの工夫次第で文章は一層読みやすくなります。
どちらが優れているかではなく、どちらも文章を書く道具として価値があるのだと思います。時代とともに変化した、文章を入力する道具。叔父のワープロを前にしながら、そんな思いを抱きました。


ワープロの名残
今のパソコンには、ワープロの名残がたくさん残っています。例えば、こんなところ。
紙に出力する前提の文書スタイル
ただ紙に文字を打ち込むそれまでのスタイルではなく、見やすい文書を印刷するという前提で作成できるよう、用紙サイズ、余白の概念をもたらしたとされています。ルーラーやタブ操作も、実はワープロから受け継がれている操作なのだとか。
カナ・漢字混在の日本語入力
多くの日本人が巧みに使いこなしているであろう、漢字、カナ、かなが混在する「日本語」という言葉たち。その表現の切り替えを、機械に再現させるというのはとても苦労したのだといいます。それらをスムーズに切り替えられる「変換機能」を初めて搭載したのが、ワープロだったのだそうです。その影響は、今日のパソコンにも十分に受け継がれていますね。
保存のアイコン
WordやExcelといったOfficeアプリ。保存を行う際のボタンがフロッピーディスクのようなものであることも、十分名残を感じますね。


最後に
叔父の遺したワープロは、今や時代遅れの機械かもしれません。しかし私にとっては、過去と現在をつなぐ大切な存在です。パソコンでWordを使うたびに、叔父の姿が少し重なる気がして、どこか背中を押されるような気持ちになります。
ワープロとパソコン。2つの時代を代表する道具を比べてみると、違いの中に同じ想いが見えてきます。文章を書くことは、便利になっても、時間がかかっても、結局は人の心を残す営みなのです。
あなたもぜひ、自分の文章を大切にしてみてください。お気に入りの言葉をWordに綴るだけで、過去と未来をつなぐ小さな物語が生まれるかもしれません。
今日もまた、叔父の残した沢山の言葉に触れながら、変わらぬ入力スタイルで、私らしい、新しい言葉を紡いでいこうと思います。
<エッセイ>
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